2019年5月5日日曜日

ハルビン(哈尔滨・哈爾濱)訪問記番外編 侵華日軍第七三一部隊遺址

 ハルビンを訪れてみたいと思ったときに、歴史を調べてみた。ハルビンのある黒龍江省はかつて日本が満州国を建てた場所であり、日本とも関わりが深い。そしてハルビンには七三一部隊の本部跡が残されていた。


七三一部隊とは

 七三一部隊は1931年から1945年までハルビン近郊に存在した「関東軍防疫給水部」の本部のことである。創設者である部隊長の石井四郎の名を取り石井部隊とも呼ばれる。病気の究明、生物兵器開発のために多くの人を人体実験の犠牲にしていることで知られている。
 私は学生時代に「悪魔の飽食」(森村誠一著)を読んだことがあり、当時非常にショックを受けたことを覚えている。ハルビンを訪れようと思ったときに、観光地を調べていたら七三一の文字をガイドブックに見つけて、本と現実の世界が繋がったことに鳥肌が立った。これまで三国志遺跡や観光地を巡ってきたが、こうした近代戦争遺産については避けてきたところもあった。しかし、これも何かの縁と訪問することを決めた。この書籍は信憑性に疑問が出ていることもあり、他の書籍も読んで訪問に挑むことにした。


侵華日軍第七三一部隊遺址へのアクセス

 場所が場所なので、正直一人で訪問するのは怖かった。現地ガイドを依頼して同行してもらった方がいいかな、とギリギリまで悩んでいた。しかし、地図を調べてみると、地下鉄が近くまで延びている。しかも出口から直進500メートルほどとアクセスは良さそう。史跡の周辺がどんな場所なの分からないので不安でもあるが、一人で訪問することにした。

 ハルビンの地下鉄はまだ開発中で、1号線と3号線しかないシンプルな路線になっている。侵華日軍第七三一部隊遺址へは地下鉄1号線で終点の新疆大街が最寄り駅。市街地から地下鉄へ。地下鉄入り口。ハルビンの地下鉄入り口はメタルっぽデザインでカッコいい。こちらは市の中心部の博物館駅。

 券売機で切符を買います。現金も使えるので安心を。路線もシンプルなので見やすいですね。新疆大街まで4元。切符はカード式。

 新疆大街の乗り場へ。案内掲示はとても分かりやすい。

 中国の地下鉄はユニバーサルデザイン。とても分かりやすい。電車は5分おきくらいにやってきます。


 1号線のカラーは赤。終点の新疆大街に着く頃には乗客はほとんどいなくなってしまった。だいぶ郊外なのでしょうか。終点という響きがなんともノスタルジック…。


地下鉄周辺の3Dマップと各出口の案内が分かりやすくでていました。731部隊も地図に載っているので迷わずに済みました。

地下鉄出口。周囲は意外と街で、大きなスーパーなどもあるようだ。

 地下鉄出口を出てそのまま500メートルほど真っ直ぐ歩くと、横断歩道の先に石碑がみえている。


侵華日軍第七三一部隊遺址を見学

侵華日軍第七三一部隊遺址の基本情報

■住所:哈尔滨市平房区
■地下鉄最寄り駅:1号線 新疆大街 徒歩10分
■営業時間:9:00-15:30 月曜休館
■門票:無料
■見学所要時間:1~2時間
 
 ここが入り口。「侵華日軍第七三一部隊遺址」と大きな石碑があります。施設跡地へ向かうにはこのまままっすぐ進めば良いですが、博物館を先に見学したいなら、道沿い東へ向かうと黒色の異様な建物が見えます。この黒い建物が博物館です。黒い3本の煙突状の柱が出ています。真っ黒で斜めに切り立つデザインが不安感を煽ります。私は知らずに入り口からまっすぐ進んで史跡から見学しました。博物館が先でも良かったかなあと思います。


 まっすぐに施設に続く道。建物はリニューアルされているようです。この昭和感のある建物、謎の迫力があります。ここで誰もいないのでかなり不安です。でも人が多くて話しかけられてもどぎまぎしてしまいそう。

 建物に近づくと、見学者が数名出てきました。開いているようなのでお邪魔してみると、管理人のおっちゃんがおり、話しかけられてドキドキ…しかし、向こうから2階へ上がってこう回って降りてくればいいよ、とジェスチャーで教えてくれました。


 こちらは本部の建物だそうで、経理部や撮影部などいろいろな部署の部屋が並んでいます。学校の廊下のようなイメージです。部屋はいくつかドアノブを回してみましたが鍵がかかっていたので諦めて進みました。この感じ、サイレントヒルです。


 外へ出て道なりに歩いてみます。そんなに敷地は広くはないようです。写真で見たボイラー跡に行ってみました。空は曇天、気温は低く、ゾクッとします。3本のボイラーが不気味に天に向かって延びています。日本軍が敗戦時に証拠隠滅で破壊工作をしたそうで、中途半端に壊されているところがリアルです。柵もないので近くまで行けなくもなかったのですが、何となく不気味で遠景で撮影しました。

 物資の運搬に必須の線路。敷地内を横切っていました。今は使われていません。この感じ、なんとなくアウシュビッツを思わせます。(写真やドキュメンタリーしか見たことはないですが)


 ここも観光客は全くおらず、敷地内はフリーアクセスのためおそらく地元民のおっさんが散策で歩いていました。ゲートのところでも見た光景ですが、唾吐きの音が聞こえてきます。やはりこの場所はそういうところなのだと緊張感が走った瞬間。

 メインの敷地内に戻って、プレハブの中に入って見ると、監獄と説明がありました。ここは人体実験の犠牲者がいた収容施設の跡地です。ただ基礎とレンガが残るのみですが、ここで行われたことを思えば言葉にならないぞわぞわとした不安感で鳥肌が立ちます。早く離れたいと思い、足早に見学しました。

 奥の方にも施設があるようですが、アパートの裏手になるようです。行き方が分からないしどこまで歩けばいいのか…一人での見学ですべてのものにビビってしまって、先に進むのは諦めようと思っていたところ、観光カートが走っていました。これでメインの見学場所は確認できそうです。手を上げたら停まってくれたので乗り込もうとしたところ、ドライバーの女性が何か言っています。ヤバい、分からない。とりあえず乗ろうとしたらやはり何か言っているので困っていたら、乗客の若い女性が10元だよと教えてくれました。
 車内にはドライバーと、施設の説明をするガイド、若い観光客の女性と私の4名。カートは4か所ほどで停車して車に乗ったまま説明を聞くスタイルでした。途中で降りても良いかもしれませんが、毎回10元取られそうです。結局、アパート裏の施設もそう遠くはなく、歩いて回れる距離でした。

 最後入り口に戻ったときに、若い女性がどこに行きたいのか英語で聞いてくれました。「あの博物館へ行きたい」と英語で返事したら、ガイドの女性がついてくてばいいと教えてくれました。若い女性はそこで降りました。韓国人だね、と中国語で言ったのが分かりましたが残念ながら私は日本人なんですよね…あえて訂正しませんが。

 そのままカートに乗って博物館へ送ってもらいました。本来はこの博物館の出口から観光カートに乗るのが順路っぽいです。

侵華日軍第七三一部隊の博物館

 博物館は地下1階と地上2階という構造で、6つのテーマで展示が行われています。大変詳細な資料に実際に研究に使われた物品など、かなり見応えがありました。館内はデザインの統一感があり、非常に良くまとまっていました。

 こちらが建物の外観。黒の無機質なデザインが冷たさ、残酷さを表現している。3本の柱は先ほど見学したボイラー塔をシンボル化したものだろう。

 最初に目にする巨大パネル。日本語でも書いてあります。

 資料は大変詳細で、実際の文書も多く展示してありました。

 軍に入れば物資の配給が受けられて、上級将校は良い品が支給されたと説明が。念のため、青いおじさんの顔は対面のテレビ画面の反射。日本語で証言を語るビデオが流されていた。館内に響き渡る日本語の肉声がまた異様で、言葉が分かるぶん余計にリアルです。



 どのように実験が行われたか、ショッキングな演出もあり目を背けたくなりました。しかし、ただいたずらにこのような展示をしているという印象は受けませんでした。博物館内には見学者がまばらにおり、皆静かに展示を眺めていました。もっと罵倒する大きな声が聞こえてくるのではないかと心配していましたが、全くそんなことはなく、展示を真剣に見ていたのが印象的でした。

 最後に、この残酷な事実は記録に残す必要があり、二度と繰り返さないよう平和を祈るという旨の結語が展示されており、私はここを訪れて良かったと思います。






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